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事業化する! ー計画は必要か?ー『2019年4月号Way To The Top』より

事業を始めるにあたって、計画は必要か。それとも必要でないか。それとも良い製品があれば良いのか

戦略・計画を立てる派閥
素晴らしいアイデアがあり、そのアイデアを事業化をするときは、前提となっている条件やそのアイデアが、どれほど力強いものかを確認すれば、自信を持って事業を前に進めることができ、利害関係者に対して説得力が増します。
戦略や計画なしで事業を進めることは、思いつきで事業を進めることとなり、練り込んだ計画・戦略で事業化した競争相手には勝てないと考える派閥です。

既存企業と競争するか、共存するか
既存の大手企業と手を結ぶことにより、整備された市場に短期間に参入でき、既存企業の経営資源や流通網を上手に利用できるかもしれません。しかし、大企業の官僚体質により事業が進まないこともあるだろうし、成功したときに新規事業側にはわずかな分け前しかないという理不尽なことを被る可能性があります。
既存企業と競合する場合には、新規事業側が想定した顧客価値を築き、既存企業が見落としていた顧客層を相手にし、それまで成功していた既存製品を代替することができます。その一方で、資金量に勝る既存企業と対決しなければなりません。

技術や製品を囲い込んで守るか、打って出るか
事業によっては自社の製品や技術を厳密に管理した方が得るものが多く、他社にマネされると競争力が弱まります。こうした事業は知的財産を守るために資金と労力を割かなければなりません。しかし、製品・技術のコントロールを優先するとコストが増加し市場投入、顧客やパートナーとの協力も難しくなります。これとは対照的に、自社製品・技術の市場投入を優先する道を選べばスピードアップし、アイデアを実際の市場で何度も繰り返し実験できます。

あらゆる戦略はトレードオフの関係にあります。既存企業に対して「競争する」と「共存する」、技術や商品を「囲い込む」と「打って出る」の2軸で戦略を検討します。


IP戦略(Intellectual Property)
既存企業と協力しながら自社製品・技術をコントロールする戦略です。
アイデアを考え出して発展させることに全力を注ぎ、その先の顧客と向かい合う川下作業は他社に任せる。パートナーとなる既存企業の顧客から見て、アイデアが高い価値を持つ必要があります。既存のシステムと相性の良い技術へと方向性を定める必要があります。「アイデア工場」という組織アイデンティティを持つことになります。

ディスラプション戦略(Disruption)
この戦略はIP戦略の対極にあります。既存企業と真っ向から競争すると決意し、自社のアイデアがどの様に発展していくか自らコントロールすることにはこだわらず、何しろ事業化を急いで市場シェアを急拡大することを重視します。
既存企業を根こそぎ新しいものに置き換えます。この戦略が持つ性質は、他社が容易にアイデアをマネをして追随できます。起業家は「眠れる獅子」を起こさないことが最大の目標になります。このため、当初の顧客層としてはニッチ層を選ぶのが一般的です。組織のアイデンティティは、創業者の活力と情熱が反映され、若くて野望に燃える社員で構成され、戦いを恐れません。組織としてはスリムで反応が早く、成長することに全精力を注ぎ込みます。

バリューチェン戦略(Value Chain)
この戦略は、新製品をコントロールして参入障壁を高くすることではなく、事業化と日々の競争優位にあります。既存のものをひっくり返すのではなく、そこに順応することにあります。組織アイデンティティは激しい競争ではなく業務遂行能力です。起業家は、他社の顧客と技術を原動力とし、社内の貴重な才能を伸ばし、他社にはない独自能力を開発することで優れたパートナーになろうと努めます。誰にもできない専門性と組織能力を身につけることで価値を創造・獲得します。組織能力は、既存企業に対する大きな差別化の要因があるか、コスト優位性が必要とされます。

アーキテクチャー戦略(Architectural)
この戦略は、自社のアイデアをコントロールしつつ、同時に既存企業と競争することにあります。並のアイデアではこの戦略は選択できません。全く新しい価値を設計し、その価値の鍵を握るボトルネックをコントロールする必要があります。

この様なフレームワークを利用することで不確実性を減らすことはできません。その代わり、現在の競争環境を、新しい競争環境にできる可能性があるのか、その選択肢を具体的に示して、選び取るための理路整然とした枠組みを提供してくれます。

計画を立てない派閥
上記のようなフレームワークを使って起業を理論化すれば、新規事業を理路整然と文章で説明できます。このことにより事業の成功率が高まると考えます。ところが、この前提は今まで一度たりとも検証されたことがありません。
経営学者達は、成功した企業のケーススタディをよりどころとしていますが、成功した事業が成功について語る内容は、多くの場合極めて疑わしいものです。系統だった記録は実際の出来事から時間をおいてつくられています。事後的に書かれた追認や偏見だらけの記述をもとにしているからです。加えて、失敗に終わった事業は記録がありません。
起業とは実践によって学ぶものであり、まずビジネスを立ち上げることが重要だと考える派閥です。
データや成功体験に基づく処方箋のような、ものが存在しないなら、起業家は実践によって学習するしかありません。人は自ら世界を経験することで世界を学びます。過去のデータを分析して学ぶのではなく、自分で独自の新しいデータを生み出して学ぶのです。そして自分の学んだことを基盤にしてまた新たな経験を繰り返し、前進しながらこの世界を理解していくのです。
成功の鍵を握る要因の一つは、顧客の反応です。これは試行錯誤を繰り返さない限り、事前に予想するのは困難です。何がヒットするか?という専門家の意見は常に外れ続けています。

良い製品・サービスを開発すれば成功する派閥
新規事業には夢と希望があります。自ら知恵を絞り、アイデアを結集させ、従来にない画期的な製品やサービスを考え出す。ワクワクする仕事です。思い入れのある製品・サービスなので自信もある。ところが、市場に投入してみると、「確かに面白いものですが、今すぐには必要ありません。」、「非常に画期的だけど、既存の設備等まで交換しなければならず、全体のコストが大きすぎて難しい。」、「まずは、一年間無償で評価させてもらって、その評価で決めます。」と言った具合に想定どおりに売れません。
問題は、製品やサービスの開発ではなく、顧客の開発がなされていないことにあります。
新規事業では「やること、それもすぐにやること」が重要視されます。営業部隊は、新しい企業でも過去の経験が有効だと考えています。その為、経験したことのある過去の成功体験による営業とマーケティングの施策します。しかし、その想定は間違えであることが多いのです。
最初の出荷以前の営業活動は場当たり的であいまいで、具体的で計測可能な目標はありません。例えば、新規事業の場合に営業部隊の採用が主な目標と信じている人もいます。初期のショーケース的な顧客の獲得に集中する人もいます。会社紹介のプレゼンテーションや製品カタログ、その他の資料作成が目的な人もいます。広告代理店と契約し、製品の知名度向上の活動をしたり、リリース時に雑誌の表紙に掲載されることが目標だと考えている人もいます。
新しい事業は、顧客と顧客が抱える課題を深く理解し、顧客に製品やサービスを買ってもらうまでの繰り返しが可能な手順を考え実行し、黒字をもたらす財務モデルの確立に集中すべきなのです。新規事業の新規顧客開発では、顧客の課題とニーズを理解し、反復可能な営業モデルの開発のためにニーズの実証を行い、エンドユーザーの需要を創出すべく顧客開拓を行い、会社を学習と発見のための組織から実行のためのよく整備された組織へ転換できるように組織再構築を行うことに集中しなければなりません。(つづく)

参考文献
シュラムカール, & 倉田幸信. (2019). 起業に戦略のフレームワークは必要ない (FEATURES 起業家、VC、学者がそれぞれの視点から考える スタートアップに戦略は必要か). Harvard Business Review, 124–129.
ガンズジョシュア, スコットエリン L., スターンスコット, & 倉田幸信. (2019). スタートアップに有効な4つの戦略 (FEATURES 起業家、VC、学者がそれぞれの視点から考える スタートアップに戦略は必要か). Harvard Business Review , 112–123. 
Simon, H. A., 稲葉元吉, & 吉原英樹. (1999). システムの科学 (第3版). パーソナルメディア.
Gilboa, I., & 川越敏司. (2014). 不確実性下の意思決定理論. 勁草書房. 
 

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