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米国と日本の税制改正プロセスの違いが大きい!

毎年の恒例行事の税制改正が、今年は103万円やガソリンの税金、防衛費の為の増税などで大きな注目を集めているところです。そんな中で、日本と米国の税制改正プロセスの比較から本質的な問題点を考察してみます。


日本の税制改正が毎年の年度予算編成プロセスの中にあることが、一番の問題となります。
日本は、新年度の歳出計画に見合う歳入を確保するために、与党税制調査会や財務省などの官僚が中心となり、年末から年始にかけて税制改正大綱を策定します。このことは税制が単年ごとの財源確保や部分的な政策誘導のために用いられることで、抜本的な制度改革よりも、利害調整を繰り返す小刻みな改正が常態化することになります。その結果、政策上の理念や中長期的な税制の安定性・合理性といった観点よりも、当面の財源補填や産業・業界団体の要望への対応が優先されやすく、税制全体が複雑化・不透明化しやすくなります。
税制が政治的配慮や予算確保という短期目標に引きずられ、中長期的な体系性や簡素化、公平性の確保といった重要な指標が後回しになり「税制のゆがみ」を生みだすことになります。

米国の税制改正は予算(Appropriations)と一体ではありません。米国連邦議会は歳入法案や税制改革案を必要に応じて検討しますが、それらは毎年必ず行われるわけではありません。税法の大幅な改正は、たとえば1986年の税制改革法(Tax Reform Act of 1986)や2017年の減税・雇用法(Tax Cuts and Jobs Act: TCJA)のように、不定期かつ政治的合意や政策的必要性が高まった段階で行われます。
税制改革は景気動向、政権の政策目標、所得格差是正、国際競争力強化など、特定の政策課題に対応するための立法プロセスとして位置づけられ、税制変更が必ずしも予算編成と連動せず、歳入確保のみを目的とした改正による累積的な複雑化が起こりません。
従って、今、日本で話題の課税最低限が103万円で何十年も放置されることもありません。米国ではインフレ調整(Inflation Adjustment)が法制化されています。具体的には、個人所得税において、課税所得区分や基礎控除額、各種控除が毎年インフレ率に応じて自動的に修正されます。こうしたインフレ調整はその都度立法手続きが必要ではなく、税法に組み込まれたルールによって変更される仕組みとなっています。言い換えれば、米国の税制は、予算と切り離され、法で自動調整の仕組みが組み込まれているため、財政需要に直結したその都度の微調整を必要とせず、政策的・構造的観点に基づく改革が実施される土壌があるということです。

日本と米国の税制の特徴をまとめると、日本は年度予算編成と税制改正がセットになっていることにより、税制が「年度ごとの財政収支合わせ」の道具となりやすく、税制そのものが担うべき長期的政策的役割や均衡ある制度設計が損なわれることになります。
米国では、インフレ調整などの法律に埋め込まれたルールによる自動的な修正は行われる一方、税制改正は必要な時に、比較的大規模で抜本的な税制の方針転換のためにおこなわれます。米国における税制改正は、日常的な歳入補填のための微調整ではなく、政策目的達成や経済合理性向上が目的であり、制度の方向性や簡素化への戦略的取り組みが可能になっているのです。

 

例えば、以下のような調整が毎年おこなわれています。

IRS、2024年度の税インフレ調整を発表(google翻訳)

以下に説明する 2024 年度の調整は、通常、2025 年に提出される所得税申告書に適用されます。ほとんどの納税者が最も関心を持つ 2024 年度の税項目には、次の金額が含まれます。

  • 2024年度に共同申告する夫婦の標準控除額は29,200ドルに上がり、2023年度より1,500ドル増加します。独身納税者および別々に申告する既婚者の場合、標準控除額は2024年には2023年度より750ドル増加して14,600ドルに上がります。また、世帯主の場合、標準控除額は2024年度には2023年度より1,100ドル増加して21,900ドルになります。
     
  • 限界税率: 2024 年度では、所得が 609,350 ドルを超える個人単身納税者 (共同申告の夫婦の場合は 731,200 ドル) に対する最高税率は 37% のままです。

    その他の料金は次のとおりです。

    所得が243,725ドルを超える場合、35%
    (夫婦共同申告の場合は487,450ドル) 所得が191,950ドルを超える場合、32%
    (夫婦共同申告の場合は383,900ドル) 所得が100,525ドルを超える場合、24%(夫婦共同申告の場合は201,050ドル)
    所得が47,150ドルを超える場合、22%(夫婦共同申告の場合は94,300ドル)
    所得が11,600ドルを超える場合、12%(夫婦共同申告の場合は23,200ドル)

    最低税率は、収入が 11,600 ドル以下の独身者の場合 10% です (共同申告する夫婦の場合は 23,200 ドル)。
     

  • 2024 年度の代替最低税免除額は 85,700 ドルで、609,350 ドルで段階的に廃止されます (共同申告の夫婦の場合は 133,300 ドルで、免除は 1,218,700 ドルで段階的に廃止されます)。比較すると、2023 年の免除額は 81,300 ドルで、578,150 ドルで段階的に廃止されます (共同申告の夫婦の場合は 126,500 ドルで、免除は 1,156,300 ドルで段階的に廃止されます)。
     
  • 2024 年度の勤労所得税額控除の最大額は、3 人以上の適格な子供を持つ適格納税者の場合 7,830 ドルで、2023 年度の 7,430 ドルから増加します。歳入手続きには、他のカテゴリ、所得基準、段階的廃止に対する勤労所得税額控除の最大額を示す表が含まれています。
     
  • 2024 年度では、適格交通福利厚生の月額制限と適格駐車場の月額制限が 2023 年の制限から 15 ドル増加して 315 ドルになります。
     
  • 2024 年に始まる課税年度については、健康フレキシブル支出契約への拠出金に対する従業員給与減額のドル制限が 3,200 ドルに増加します。未使用額の繰り越しを許可するカフェテリア プランの場合、最大繰り越し額は 640 ドルで、2023 年に始まる課税年度より 30 ドル増加します。
     
  • 2024 年度、医療貯蓄口座で自分専用の補償を受けている参加者の場合、プランの年間控除額は 2,800 ドル以上で、2023 年度から 150 ドル増加し、4,150 ドル以下でなければなりません。これは、2023 年度から 200 ドル増加したものです。自分専用の補償の場合、自己負担額の上限は 5,550 ドルで、2023 年度から 250 ドル増加します。2024 年度、家族向けの補償の場合、年間控除額は 5,550 ドル以上で、2023 年度から 200 ドル増加します。ただし、控除額は 8,350 ドルを超えることはできず、これは 2023 年度の限度額より 450 ドルの増加となります。家族向けの保険の場合、自己負担限度額は 2024 年度では 10,200 ドルとなり、これは 2023 年度より 550 ドルの増加となります。
     
  • 2024 年度の外国所得控除額は 126,500 ドルとなり、2023 年度の 120,000 ドルから増加します。
     
  • 2024 年に死亡した被相続人の遺産の基本控除額は 13,610,000 ドルとなり、2023 年に死亡した被相続人の遺産の基本控除額 12,920,000 ドルから増加しました。
     
  • 贈与に対する年間控除額は、2023 暦年の 17,000 ドルから 2024 暦年には 18,000 ドルに増加します。
     
  • 2024 年度の養子縁組に対して認められる最大控除額は、適格養子縁組費用の最高 16,810 ドルで、2023 年度の 15,950 ドルから増額されます。

この記事を書いた人

税理士 藁信博(代表者プロフィール
藁総合会計事務所 代表
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