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企業税務、M&A税務などを含む幅広い分野の税務コンサルティングをはじめ企業のビジネスパートナーとして重要な経営課題の解決を支援します。

いつも書くことですが、企業の存在理由は「利益を上げること。」ではありませんが、利益を上げることができなければ、存在することができません。当たり前のことです。また売上を増やすことが利益を上げることにはなりません。例え売上が2倍になったとしても、利益が2倍になるとは限りません。それどころか売上が2倍になったにもかかわらず、利益が半分になることも、よくあることです。また中小企業では、売上が2倍になる過程で倒産することもあります。
利益を伸ばす要因は、3つしかありません。販売量、コスト、価格です。この紙面を使って過去3回にわたって販売政策的なものを書きました。2009年4月号は、ランチェスター戦略(弱者の戦略)。2009年8月号は、三枝匡さんの経営を行ってきた中での教訓。2009年12月号は、PPMによる顧客のセグメンテーションです。総括すると、中小企業の社長が会社の営業の政策もしくは営業そのものを考える際に検討すべき事を書いたつもりです。

今回は上記3つの要因のうちの「価格」です。ちょうどいいタイミングで、『FREE フリー 無料からお金を生み出す新戦略』(クリス・アンダーソン著)という価格政策・ビジネスモデルそのものの見直しに関する本が出版されています。書店で平積みされ、新聞などでも引用・紹介されていますので、この本を引用しながら書かせてもらいます。尚、クリス・アンダーソン氏は、以前紹介した『ロングテール』の著者でもあります。

フィリップ・コトラーは、アメリカの大手企業の製品一つ当たりの販売価格を1ドル上げると、どれほど利益がもたらされるのかを調査しています。
 コカコーラ     6.4%
 富士写真フイルム 16.7%
 ネスレ      17.5%
 フォード     26.0%
 代表的な米国企業 12.0%
上記のとおり、たった1ドル値上げするだけで膨大な利益が生まれることになります。このことからも価格という施策がどれほど大切かがわかると思います。

「フリー」で、いくつも興味深い事例が紹介されているのですが、そのうち2つを紹介します。

あらゆるものが安くなる
サイモンとエーリックが賭をしました。賭の内容は10年後に銅、クロム、ニッケル、スズ、タングステンの5つの金属の価格が上昇するか、下落するかをです。
この賭の根底には、2つの考え方があります。
一般的に有限な鉱物資源は、資源の枯渇を想定して値段は、どんどん上がると考えられます。エーリックは、この考え方で1990年にマッカーサー財団の天才賞を受賞しました。
一方で「ある資源が希少となり、価格が上がりすぎると、人々は贅沢に供給できる代替品を見つけようとするので、希少な資源の需要が減ること。人間の才と科学技術の学習曲線が、ある資源を使い切る前に新しい資源を使えるようにする。」ことから、価格が下がります。
結果は、5つの金属のうち4つの価格で下がっていました。

余剰 トウモロコシ経済
米はタンパク質が豊富ですが育てるのが難しい。小麦は育てやすいがタンパク質が少ない。トウモロコシは育てるのが簡単なうえに、タンパク質が豊富です。トウモロコシを主食とする文明は少ない労働で自分たちを養えるので、米や小麦などの文明に比べると外の文明に対しての活動(戦争)が多いという分析があります。
今日では、スーパーにある商品の4分の1にトウモロコシが入っており、また食品だけではなく化粧品、使い捨ておむつ、洗剤、段ボールや、建物の建材などにも利用されています。そして最近では、エタノールという形で自動車の燃料に利用されています。原油の高騰につられてトウモロコシの値段が上がっていますが、これも代替材料が見つかるまでのことです。

価格の決定方法
価格の決定方法には、大きく以下の2つの考え方があります。
①総コスト(原価)から販売価格を算定する方法
②価値をベースに販売価格を設定する方法
価値をベースに販売価格を算定する方法と言っても今ひとつピンときませんね。この価値をベースに価格を算定している代表的な会社にデュポンがあります。
デュポンが、例えば強力な化学薬品を工場から工場へ送るための改良型ホースを開発したとします。従来型ホースは、1年に1回工場を操業停止とし、新しいホースと交換する必要があります。改良型であれば、3年間交換する必要がありません。顧客が古いホースを選べば、3年間で3回の工場の操業停止と、3本のホースの費用を負担することになり、改良型を選べば、3年に1度の工場の操業停止と、1本のホースの費用を負担するだけですみます。改良型ホースの価格は、毎年従来型ホースの購入価格とその都度工場を止めるための費用の総コストより低ければ、顧客にとって魅力があると言うことになります。決して従来型の価格の3倍の販売価格や、原価に適正な利益率といった販売価格を設定しません。顧客が受けるベネフィットを忘れて価格設定をしてはいけないということです。

もちろん、顧客が受けるベネフィットがなければ、価値に基づいた価格政策をとることはできません。私の個人的見解ですが、3Dテレビがこの春から夏にかけてメーカー各社が発売します。マスコミが3D戦争に勝てるかどうかが、メーカーの生死を決めるという論調で報道しています。しかし、薄型テレビが3Dテレビに移行するだけであり、このことにより高い付加価値を与えられるわけでもない。販売価格は薄型テレビと変わりなく、現在の序列が維持できるかどうかの定期テストに過ぎないのです。これでは価値をベースにした価格政策はとれませんね。

様々な価格
価格は、顧客、地域、時、サービスなどの独立した要素に応じてカスタマイズされます。また価格によっては、購入量が変化します。
電話、電力、水道など 
月額の固定料金と従量料金からなる料金表です。
航空運賃
購入するタイミングと運航日で価格が異なります。またマイレージなどで、実質的値引きを行っています。
月刊誌 
年間購読、複数年購読で1冊当たりの値段が違います。
ソフトウェア
ライセンス数で値段が違います。ライセンス数が多ければ、一つ当たりのライセンス料は安くなります。
ホテル
予約の有無、旅行会社経由か否か、宿泊日、部屋のグレードで値段が違います。
会員制スーパー
ポーションを大きくすることで、値段を安くします。
アメブロ
無料です。広告を表示できなくすると有料になります。
ネット検索
無料です。広告収入により検索サービスの運営がなされています。
会計事務所
確定申告の料金は割高です。(サービスの時期が集中するからです)

空洞化
最近では、定価でものを買うことがほとんどなくなっています。当事務所のお客さんで楽天でネットショップを運営している会社においても、送料無料、プレゼント、おまけなどのサービスが当たり前となっています。これらのサービスは利益をすり減らしていくことになり価格政策を空洞化させます。この価格政策を空洞化させるものを、把握、管理することが難しいことも現実です。
また、この顧客との取引では損をしていても、他の優良顧客から多くの利益を得ていると考えて取引を行うこともありますが、実際に調査してみると、売上を多く上げている顧客ほど過剰なサービスや仕切り値の低さなどのために全く利益に貢献していないこともあります。売上に貢献していない顧客に比較して利益が大幅に少ないこともあるのではないでしょうか。
当事務所のサービスの一つとして、新規設立法人であれば「3ヶ月間顧問料無料」のサービスを行っていますが、この3ヶ月無料が当事務所の利益にどれくらい影響しているかを考えたくありません。これじゃ、いけないよね!

参考文献
『FREE』クリス・アンダーソン著
『コトラーの戦略的マーケティング』フィリップ・コトラー著
『価格戦略論』ヘルマン・サイモン他著

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