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4月の当雑誌の発行は、だいたい遅れます。この時期忙しいということもありますが、今回は、特に遅れました。いったい、皆さんのお手元に届いて、この文章を見て頂くのはいつのことでしょうか?
特に今回は、余計なことを考えていたら、筆が進まなくなりました。

『キャズム』(著 ジェフリー・ムーア)という本があります。日本語版の初版が2002年1月ですから、10年前の古い本です。この冒頭に、「1980年代に、マイク・ブラウンという同名の2人の男が、誰も知らないような会社を設立し、一般人は使わないようなソフトウェアを売り出し、何百万ドルという利益を手にしたとしたら、しかもそれを10年以内に達成したとしたら・・・同じ事が、我々にできないはずはない。」とあります。ビルゲイツになることはできなくても、マイク・ブラウンという人には、なることができるのではないだろうかと。
ソフトウェア業界は、大きな夢を与えてくれる業界ですが、多くの人が一攫千金を目指して跋扈する世界です。そこで成功するということは、ある意味、「選ばれた人」であるともいえます。
なぜ、ソフトウェア業界は、大きな夢を与えてくれるのでしょうか。著者は、ソフトウェア業界には「連続的なイノベーション」ではなく「不連続なイノベーション」が多くある。
この不連続なイノベーションから大きな利益が生まれるのです。

不連続なイノベーション
「不連続なイノベーション」とは、人々の行動様式に変化をもたらすサービスや製品のことです。例えば近々facebookという会社が上場します。サービス開始からわずか8年で時価総額が1,000億ドル(約8兆円)の企業が誕生することになります。このfacebookのサービスでみなさんの行動が変わったのではないでしょうか。facebookにより、友人や知人をより身近に感じることができるようになったのです。これって凄いことですね。

ソフトウェア業界だけでは無い
このような不連続のイノベーションは、ソフトウェア業界に限ったことではありません。ソフトウェア業界にはその様なことが多くあるに過ぎません。古くは、ソニーがウォークマンで音楽を家の中から家の外に持ち出すことで我々の行動を変えました。もちろんハイテク製品だけではありません。宅急便、コンビニエンスストア、ネット通販やテレビショッピング等々、いろいろあります。

連続的なイノベーション
ところで「連続的なイノベーション」とはどういったものでしょう。例えば、薄型テレビです。ブラウン管のテレビから薄型テレビに変わったことで、設置面積は、大幅に減りました。しかし、人々の行動様式を変えるには至っていません。液晶テレビになってもブラウン管テレビの時と変わらず、テレビの前に座って、気に入った番組になるまでチャンネルを押し続けているはずです。アナログ放送から地上波デジタル放送に変わったことも同じです。私たちは相も変わらずテレビの前に座っています。そういえば映像がきれいになったという程度で、それにも慣れてしまいました。このように革新的な技術や製品であったとしてもユーザーの行動様式を変えない商品やサービスは「連続的なイノベーション」と呼ばれます。

皆さんの業界はどうでしょうか。あなたには夢がありますか。あなたの歩んでいるその道の先にあるのは何ですか。それは、不連続なイノベーションですか、それとも連続的なイノベーションですか。経営者なら常に自問自答しなければならない問題です。

経営者なら経営しろ
夢を追いかけて、奔走することだけが経営者ではありません。その道の先にあるのは「いつまでも変わらないことである」と決定することも重要な経営者の判断です。
しかし、その道の先にあることに目を閉じることもできます。日々の作業に追いまわされ、些末な作業の毎日を繰り返すことは、仕事をしているという感覚を与えてくれます。しかし、それは、経営者がおこなうべきことでしょうか。
『プロフェッショナルマネジャー』(ユニクロの柳井正さんが解説?推奨?。ハロルド・ジェニーンが著者で、あのITTの元CEOだった人です。)という本の中に「経営者なら経営しろ。」と書いてあります。
経営者の本来の仕事は経営をする人だということです。それ以外のことは何も経営者がやらねばならないことではありません。

会計事務所の仕事
会計事務所という仕事を考えてみます。
毎月訪問し、月次の報告、お客様との今後についてのディスカッション。そして年1回、決算書を作成します。そんな日常の中で、成功していくお客様、うまくいかないお客様、中には廃業や倒産してしまうお客様もいます。
「ただの傍観者になってはいけない!」、「我々にできることもあるはずだ!」と日々職員と一緒に格闘しています。

会計事務所のビジネスモデル
会計事務所のビジネスモデルは、多くのお客様から毎月、報酬を頂き、事務所の経費に充てています。収入源を分散することで、お客様が倒産した時にも、共倒れの心配はありません。一方で、顧客数が多いため、一つのお客様に使える時間には限度があります。
お客様の多くは事業者や富裕層です。仕事の内容は、基本的には、定型業務で、税金の計算についてのサービス、経営に必要な数値の集計についてのサービスが基本的なサービスです。典型的な労働集約型のサービス業で、最も大きなコストは、人件費です。

これらのサービスは基本的に法律で守られており、他の業界と異なり革新的なサービスが既存のサービスに取って代わることはありません。
その代わりに、多数の同業者がおり、今後も増える傾向にあります。
同業者のサービス内容は、それぞれで大きく異なりますが、無形のサービスであることも含めて、違いを表現するのが難しいと考えています。また、最も大きな問題として税理士や会計事務所のサービスに対して多くを期待していないことにがります。

会計事務所の倒産
このような状況下で、毎日こつこつと仕事をすれば、倒産することはありません。
倒産リスクが高まるのは、どんなときでしょうか。収入が無くなったり、仕入などで支払が先行し、資金繰りができなくなる時です。
会計事務所の収入は、多くの顧客からの継続取引による収入なので、いつか収入が無くなることはあるとしても、明日突然全てのお客様がいなくなることはありません。もし私たちが手抜きをしてお客様に見放されたとしても、収入が漸減するに留まります。
収入が漸減している間に、コスト構造の修正が可能なので、業務できなくなるまでには相当の時間的猶予があります。
会計事務所の資金繰りに関してはコストが先行で発生することは、基本的にはありませんから、他の業界に比べて苦労は少ない。なぜならコストの多くは人件費で、基本的に随時仕入をし、労働時間を消化しているからです。

現状に甘んじようとする力
「今の仕事に不満があるか。」という問いに関しては、お客様とのコミュニケーションは良好で、多くのお客様から支持を頂いていると感じています。もちろん、まだまだ未熟であることもわかっています。が、同業者のサービスに比べれば、総じて良いサービスを提供していると考えます。
現状のコスト構造の中で、異なる仕事をすることは、なかなか難しいこととなります。なぜなら、主なコストである人件費は既に消費されてしまっているからです。無駄が無いはずだからです。
新たなコスト構造の異なる事業を開始しない限り、突然倒産することはありえません。
しかし、このままでは、その他大勢でしかありえません。もちろん、コスト構造の異なる事業だけが重要なことではありません。
日々の改善の中から、業務の質や新たなサービスを作っていくことは当然に行われなければならないことです。

変化できるか?
しかし、経営者として事業を開始したからには、何か誇れるものを成し遂げたいと考えるのは、何も特別なことではありません。むしろ、当然その様に思わなければならないと考えます。
「従業員がその様なことを望んでいない?」、「そうかも知れません。」このような業種ですから、安定志向の人達が集まってきているともいえます。しかし、その様な人も一生懸命にサービスを提供していれば、気づくはずです。10年後、15年後に何をしているのか。たぶん今とそんなに変わらないということに・・。

会計事務所の仕事で、この先ブレイクすることはありません。なぜなら、リスクをあまり取っていなし、不連続なイノベーションもないからです。

あなたは「不連続のイノベーション」を興したいですか。

というわけで、今回も読者を置き去りにして、当事務所のことを書いてみました。しかし、皆さんの参考になるはずです。同じ中小企業の経営者の悩みですから・・。

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