こんなはずではなかった!『2011年4月号Way To The Top』より
何かが、少しずつ違っていく。本当に少しずつです。ついに最初の頃とは、全く違ったものになっている。それが、良い方向であれば、問題ありませんが、悪い方向だったらどうしますか?それが、経営する会社であれば・・・・。
ハーバードビジネスレビューに毎月、紹介されている本があります。『ザッポス伝説』(著 トニー・シェイ)という本ですが気になってはいてもなかなか購入するチャンスがありませんでしたが、時間が余り、本屋さんでプラプラしていた時に買ってみました。412ページある本ですが、あまりのおもしろさに、3時間ほどで読み終え、ここ2・3日は摘み読みしています。
ZAPPOS
この本には、トニー・シェイの若さゆえの未熟さ、苦悩が書かれています。しかし、それだけでなく苦悩を笑い飛ばすユーモアー、想像力、成長、成功があります。是非読むことをお勧めします。そもそもこのZAPPOSという会社は、アメリカではとても注目を集めている会社です。優れたカスタマーサービスで注目を集め、「最も働きがいのある企業100社」にも選ばれています。日本での紹介は、この本とあと一冊が発行されていますので、詳細は皆さんが自分で読んでください。
企業文化、社風
ZAPPOSの経営者であるトニー・シェイは、会社に大切なのは人材ではなく、企業文化だと言っています。また企業文化はブランドであるとも言っています。人材は退職することにより、会社から財産が減ることとなりますが、企業文化は会社の最も重要な財産で有り、社員の退職により減ることはないのです。そして経営者は、企業文化、社風を創り上げることが重要であると説いています。勿論、ただ飾るだけの会社理念や方針は、何の意味もありません。社員が仕事をとおして真剣に取り組んで初めて意味があります。
コア・バリューを考える
ZAPPOSには企業文化、社風の指針として「10のコア・バリュー」がありますが、今回は、読む側を置き去りにしてでも、この紙面で当事務所のコア・バリュ-について考えてみます。
企業文化、社風を考える時に、我々が「目指すべき会計事務所」という視点から考える方法もありそうですが、最悪の会計事務所を考えて、最悪の会計事務所から、我々がなすべき企業文化、社風を創造してみることにします。
最悪の会計事務所
若い時に独立した税理士は当初は、すばらしいサービスを提供するために高い志があった。しかし、時間の経過とともに、その情熱は失せ、増えていった社員は、それぞれ無気力で、何の想像力もない、つまらない仕事をただ1人で黙々とこなしている。そしていつの間にか「税務署の下請け」に成り下がる。それを自覚している所長も、学びもなく、成長している実感もなく、新たな価値もつくりだせず、無関心を装う。サービス精神の欠如が自己肯定と他者批判を招いている。そこには苦痛しかない。
こんな事務所にはしたくありません。
だから、ZAPPOSのコア・バリューを真似て当事務所のコア・バリューを作りました。
当事務所のコア・バリュー
1 変化を受け入れ、変化を促進する。
成長中の会社において逃れられないのは、絶え間ない変化です。我々はまだ未熟で、これからも大きく変化することで、お客様に支持される会計事務所でなければなりません。
決して、現状に満足せずに、常に変化を促進、推進することが必要です。
会計事務所とは、こういうものであるという固定観念は、変化を受け入れず、現状維持に満足していることになります。我々の会計事務所は最高のサービスを提供する会計事務所でなければなりません。
変化の兆しは、お客様の言葉や態度の中にあります。我々は、お客様の言葉に耳を澄まし、お客様を理解しなければなりません。
お客様の要望に、ただ受け身で答えているだけでは、最高のサービスを提供していることになりません。お客様から要求があった時には、我々のお客様に対する理解が足りなかったのかもしれません。
変化に備えて計画し、準備をしていますか?
2 成長と学びを追求する。
あなたが個人的にも仕事の上でも成長する事が重要であると考えています。
私たちは、皆それぞれ、自ら気づいている以上のポテンシャルを秘めていると信じています。
知識をどんなにため込んでも何の役にも立ちません。知識をお客様にわかるように提供することで初めて、知識や経験が役に立ちます。つまり知識よりもむしろ、お客様を理解するためのコミュニケーション能力が重要です。
また、お客様をとおして、我々がどんなに成長しても、決して「あるべき姿に到達する」ことはありません。我々が目指すべき姿は、常に我々の遙か前にあるはずなのです。挫けずに成長し続けることが重要なのです。
私たちが取り組んでいることは簡単なことではありません。お客様がチャレンジし、成長するお手伝いをすることは、簡単にできることではありません。サポートすべき我々が先にあきらめてしまったら、お客様が不幸です。我々の努力が足りないために、お客様が不幸になる可能性すらあります。
お客様に「この会計事務所でよかった!」といわれることは、なんと素的なことでしょうか?そのために、我々は自らを成長させなければなりません。
学び、成長し、スペシャリストになる必要があります。
3 オープンであることと、誠実であることが、最高の人間関係を生み出すと信じています。
信頼関係のあるチームは、それがないチームに比べて、より大きな経験や成果、成長の機会をを与えてくれるものであると信じています。
常に正直に行動し、思いやりを持ち、気さくで、すべきことをするように気を配り、人間関係を大切にすることが重要です。しかし、忘れてはならないことは、あなたが何を話したか、何をしたかではなく、相手がどう感じたかです。
何かを「してあげた!」と思ったときには、そこには誠意や信頼は無いのです。
あなたの人間関係が広く多様なものになればなるほど、あなたが事務所に与えるプラスの影響は大きくなり、ますます会社にとって価値のある人になります。
4 創造的、オープンマインドであれ。
私たちは誰もがリスクを取ることを恐れず、失敗することを怖がらないでいてほしいのです。失敗しないということは、必要なリスクを取っていないことを意味するからです。
失敗から学ぶ限り、私たちは失敗を奨励します。
いつもの資料をいつものように作成し、お客様に提供するだけでは、安住の地から一歩もでたことにはなりません。
お客様に新たな提案をした時や、お客様に新たな資料を提供した時に、期待とは違う反応があるかもしれません。提案、提供の仕方が悪かったのか、お客様のことを理解できていないのかもしれません。しかし、その努力やチャレンジは、仲間が、お客様が必ず見ています。
あなたの仕事に冒険心や創造性が発揮されていますか。
5 より少ないものからより多くの成果を
勤勉であることと仕事を成し遂げるために特別な努力を払うことが良いことであると確信しています。また一方で私たちの仕事には常に改善の余地があるとも承知しています。改善する事への緊迫感を絶対に失ってはいけません。
お客様に対してもっと創造的な仕事をするためには、定型業務をより効率的にし、創造的な仕事をするための時間を確保する必要があります。1時間かかった仕事を30分で終わらせることで、学びの時間を作ることができます。学び、成長した成果はお客様に提供することができます。
どうすれば、あなたがしていることをより効率的にできますか。どうすれば、事務所全体の効率化が進められますか?効率化のためにあなたは何ができますか?
6 情熱と強い意志
情熱は私たちの会計事務所を前進させる唯一の燃料です。情熱、強い意志、粘り強さ、緊迫感を私たちは重視しています。
私たちは、お客様に大いに触発されているはずです。お客様の成功したいという強い意志が私たちに届いています。そんな経営者の方と一緒に働くことで、興奮しないはずがありません。
仕事に情熱を感じていますか?自分のしていることや一緒に仕事をしている人が大好きですか。ここにいて幸せですか。自分がしていることとその先にあるものを信じていますか。この場所はあなたにふさわしい場所ですか?
とりあえず、こんな感じにします。このコア・バリューは、せっかく作ったので、弊社情報誌の最終面に掲載し続けます。そして、このコア・バリューは少しずつ改善できれば良いと思います。読者の皆様には、その変化を楽しんでください。
ZAPPOSには、変化と想像力と、若さがあります。コア・バリューの他にもザッポス・ライブラリー、パイプライン、カルチャーブックなるものもあります。藁会計事務所ライブラリーは、ホームページにでもアップしておきます。
参考文献 『ザッポス伝説』著者トニー・シェイ