生命保険予定利率引き上げ
日本生命保険では保険の契約者に約束する利回り(予定利率)を2025年1月に引き上げます。予定利率上げは約40年ぶりとなります。同業各社も同様に引き上げをおこなう旨の報道がされています。
生命保険の予定利率が上がることによるメリットと、相続税における生命保険金の非課税制度について説明します。
生命保険と相続税の非課税制度
相続税の計算において、生命保険金は「500万円×法定相続人の数」という非課税限度額が適用されます(参考:国税庁ウェブサイト)。これは死亡保険金が遺族の生活保障という性質を持つことから、一定額まで相続税の対象から外す仕組みです。そのため、被相続人が生前に保険料を負担することで、現預金や有価証券を減らし、死亡保険金として非課税枠内での財産移転を行うことが可能になります。この非課税枠は、高額資産を保有する層にとって、相続税負担軽減の有効な手段となりえます。
予定利率とは
予定利率とは、生命保険会社が保険料や解約返戻金、将来の運用見込みを計算する際に用いる「想定される運用利回り」のことです。この予定利率は市場の金利環境に影響を受け、長期的な低金利時代が続くと保険会社は予定利率を引き下げる傾向にあります。逆に、金利上昇局面では予定利率が引き上げられる可能性もあります。この変動は、保険商品の貯蓄性や死亡保障部分のバランス、評価額に影響を及ぼし、結果的に相続税対策上の戦略にも関わってきます。
予定利率が上がる場合のメリット
金利上昇局面などで予定利率が上がれば、保険商品の貯蓄性が高まり、将来的な解約返戻金や満期返戻金の増加が見込めます。この状況は主に次のような点でメリットとなります。
資産形成効果の向上:予定利率が高い保険は、同一保険料でもより多くの返戻金を将来得られる可能性があります。相続発生前の段階で資産を効率的に増やし、最終的には死亡保険金として遺族へ移転することで、生活保障や納税資金確保に余裕を持たせられます。
運用効率の改善:貯蓄性の高い保険は、低リスクで長期的な運用を行う手段として有効です。相続時に保険金を受け取るまでの間、相続人にとっては利率上昇により有利な条件で保険価値が育つことになり、トータルで得られる経済価値が拡大します。
まとめ
生命保険は、相続税対策として「非課税枠」という明確な優遇措置を活用できる希少な金融商品です。予定利率の引き下げは、相続発生時の評価額抑制や純粋な死亡保障強化を通じた節税効果につながる一方、予定利率の上昇は、貯蓄性向上による資産形成効果と受取時の保障強化というメリットをもたらします。どちらの局面においても、生命保険は相続対策や納税資金確保の手段として有効であり、市場環境を踏まえて契約内容を見直すことで、より有利な相続設計が可能となると言えるでしょう。