第3話 相談相手の選び方
「おじゃまします」
鈴木に連絡を取ったゆうこは、鈴木の自宅に招かれた。
「悪いね、こっちまで来てもらっちゃって」
「いえ、こちらこそお忙しいところすみません」
鈴木は小学1年生になる娘を持つ主婦である。2年前に会社を退職し、現在はフリーランスで在宅プログラマーをしている32歳。面倒見の良い鈴木にゆうこは公私ともに世話になっていた。仕事と育児を両立する鈴木を、ゆうこは仕事の先輩としても女性としても尊敬している。
「急に会社辞めて独立するだなんて、びっくりしたよー」
「将来的には、とは考えていたんですが、早くてもいいかなと思い勢いで決めちゃいました」
独立しようと決めたのは映画の影響なんです、とはさすがに言えず、ゆうこは笑いながら言葉を濁した。
「自宅を事務所にして始めます。この仕事なので設備投資は少なくて済みますし、あと領収書・請求書などを準備したり、販促ツールを作ろうかと。あと開業前の準備は何をしたらいいでしょうか」
「開業前の準備ねぇ。業種によっては許認可が必要になるからその手続きね。飲食店で営業許可証っていうのが飾ってあるのを見たことがあるでしょう?」
「あります!」
「あれよ、あれ。うちは旦那が飲食店を始めるのに食品営業許可の手続きをしたわ。まぁプログラマーは許認可が必要な業種に該当しないから、これは必要ないけどね」
※許認可手続きを行う窓口は業種により異なります。(保健所や警察署、ハローワーク、税務署、都道府県庁など)自分の業種がどこの窓口なのかは各窓口機関のホームページで確認出来ます。許認可手続きは行政書士が行っていますが難しくなければ自分で手続することもできます。
「あと専門家の相談相手を見つけることかな。独立開業するのに、自分では分からない問題も多いからね。自分でやろうとして時間がかかって、本業がおろそかになったら本末転倒よ。それに専門家にきちんとアドバイスをもらえれば、本業にも集中できるからね」
「なるほど。鈴木さんはそういった相談相手はどうやって探したんですか?」
「知り合いから紹介してもらったり、インターネットでも調べたりしてね。例えば開業する時に税務署に提出する開業届とか、確定申告の相談をするなら税理士ね。私がお世話になっている税理士を紹介しようか?」
「ぜひ、お願いします!」
こうしてゆうこは鈴木の紹介により、税理士の藁を紹介してもらう。開業にあたっての相談と手続きを進めていくのだった。
【相談相手について】
独立開業するにあたり、誰しも初めてのことばかりで分からないことがたくさんあると思います。そんなとき税理士や弁護士などの専門家は心強い相談相手となるでしょう。ネットで検索すれば何でも調べられる時代ですが、ネットの情報だけで何でも決めてしまうのは危険です。専門家はその選択でどんなことが起きるかさまざまな場面を想定して教えてくれるでしょう。
【専門家】
- 税理士
税金、確定申告 - 社会保険労務士
社会保険、労働保険、雇用保険 - 行政書士
許認可、登録 - 司法書士
登記申請、契約書の作成、抵当権の設定・抹消 - 弁護士
特許、商標権、法律全般 - 中小企業診断士
経営指導、企業診断
上記のように、さまざまな専門家がいます。また専門家も人間ですので、その人の雰囲気・考え方・仕事のやり方・顧問料などそれぞれ違います。当然、自分と合う合わないがあります。最初の1人で決めるのではなく、複数人と会って話をして、この人にだったら任せられる!と感じた方にお願いするといいでしょう。