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ランチェスターの法則とかランチェスター戦略とか、聞いたことがあると思いますが、あれは、いったい何なのでしょうか?

「戦い」に勝つには、「根性・がんばり」とか、「勝つ為の強い意志」といった精神論が結果を大きく左右します。ただ、「戦い」には、精神的なもの以外に科学的なものも少なからずあります。これがランチェスターの法則・原則といわれるものです。
このランチェスターの法則を応用して、第2次世界大戦でイギリス軍はロンメル作戦で成功を収め、アメリカ軍はガダルカナルの戦い以降のすべての戦いで勝利し続け、日本は負け続けました。学術的にはオペレーションズ・リサーチと呼ばれ、さまざまな計画に際して最も効率的になるよう数学的・統計的モデルやアルゴリズムを研究する分野として多くの研究者がいます。今回はランチェスター第2の法則を中心に、「弱者の戦略」について一緒に考えてみましょう。

ランチェスター第2の法則は、複数による確率的な戦いに適用されます。つまり機関銃や大砲、航空機による攻撃は、どの弾が当たるかわかりませんが、確率により損害が出る確率戦となります。この場合の攻撃力は、武器性能が変わらなければ、兵力数の2乗したものになります。
具体的には、「ランチェスター第2法則による損害数表」を見てみましょう。A軍が100機に対し、B軍の兵器数が変動した場合にA軍の残存数・損失数とB軍の損失数がどう推移するかがわかります。A軍が100機とB軍が100機でぶつかれば共倒れとなります。100機対50機となると、A軍が13.4機の損失に対してB軍は50機の損失となり、言い換えると自軍が87機になる頃に、相手は全滅してしまいます。もはやこれは犬死にですね。
レッドクリフIIが上映されていますが、関羽や項羽のような一騎当千の能力の兵士がいれば異なる結果となりますが、これは望むことにムリがあります。現実には兵士の数だけがものをいいます。

まともに戦ってもかてません!
「兵隊の数だけが問題であるから、中小企業は尻尾を振って逃げればいいのね!」といいたいわけではありません。中小企業は、アメリカ軍の様な強者の戦略である①物量戦②複合戦③間接戦④広域戦⑤包囲線を使ってはダメだということです。どんな業界にも先行しているナンバーワン企業があります。ナンバーワン企業は強者の戦略を使って戦えば良いのですが、新参者が同じように強者の戦略を使っても勝つことができないということです。

弱者の戦略
そこで中小企業には弱者の戦略が必要となります。この弱者の戦略は強者の戦略の応用となります。どんな大きな戦いも、小さな戦いの積み重ねに過ぎません。また、経営は戦争と違い、先行企業(優位企業)と弱小企業が命の取り合いをする直接戦ではありません。顧客を介した間接的な戦いになります。全体では10対1の戦いであっても、顧客を介した小さな戦いの場においては、1対10を作り出すことも可能です。特定の顧客や特定の商品、特定の地域などの限定された戦いにおいて1対10を作るのが弱者の戦略です。

1 全体発想を捨てて細分化する。
兵力豊かな敵と全面戦争しても犬死にするというのは、先に説明したとおりです。兵力が豊かといっても、あらゆる面で豊かでしょうか?細かく見ていけば、弱点もあるものです。商品構成、販売地域、商品流通経路など、敵を細分化して分析し、勝てる部分だけで戦うのです。まだ市場シェアが弱い地域があれば、そこだけを攻めます。競合者がいない小さな市場やすき間で戦いましょう。
2 重点主義に徹しナンバーワン作りを目指す。
経営資源を集中し100対50の戦いをし、たった一つでもナンバーワン企業となる。例えば、地域ナンバーワン、一つの商品でナンバーワン、1つのサービスナンバーワン等々。ナンバーワンがあると社内の空気が変わります。小さくとも自信が持てます。
3 営業活動は局地戦を選ぶ
限られた営業人員で広い地域を攻めようとすると、営業密度が薄くなり、勝てる戦いも勝てなくなる。会社から遠くなるにつれて移動時間が多くなり営業力が低下する。会社から遠くても競争相手の弱い部分でのみ営業活動を展開する。小さい地域であってもナンバーワンの営業地盤を持つことで会社内のあらゆる場面で波及効果が期待できます。
4 戦闘時間を長くする。
兵力数が多い強者と戦闘を行えば、戦闘時間が長くなればなるほど、弱者の損害量が増大し全滅してしまう。しかし、企業対企業の戦いでは、相手を直接倒す戦いではなく、市場にどれだけ商品やサービスを販売したかの間接的な戦いとなります。活動時間が長くなると営業員の数が少なくても効果が出ます。
5 軽装備で自由度の高さを保つ
資金が固定化される設備投資の大きくなる事業には手を出さない。ましてや本社ビルなど持たない。
6 先制攻撃ですぐ実行
巨大な組織は動き出すのに時間がかかる。新しい商品を素早く市場に出し、見込みが無いと考えるなら速やかに市場から撤退する。また大会社が3日かかるところを、2日または翌日納品することで顧客から指示される。早いサービス、早い仕事が強者に勝つための決め手である。
7 隠密行動を取り表面にでない。
力のある企業は儲かる方法や儲かる商品があれば、すぐにマネをしてきます。ちょっと成功したからといって新聞や雑誌でぺらぺらしゃべるのはやめましょう。

量7に質3の原則
第2次世界大戦中にアメリカは、対日本戦予算の枠内でどの様な配分で予算を組むかを考えていました。アメリカは、ランチェスターの法則を応用してB29の爆撃機に3分の2、その他の航空機や戦艦、空母、戦車に3分の1の予算を配分しました。ちなみにB29爆撃機は直接日本の国内にある軍需工場や国民を確実に破壊するものです。
『「成果=量の分野の2乗×質の分野」の計算式で総予算を「10」としたとき、どの様に配分すれば成果が最大になるか?』の表によると成果が最大になるのは「量の分野」が約7で「質の分野」が約3の場合になります。経営でお客さんを直接攻撃するのは営業部隊です。つまり営業が量の分野となります。質の分野は管理部門ということになります。
この原則は、エネルギーの配分にも使えます。計画を立てるための時間が3、計画に基づいて営業を行う時間が7という具合です。営業マンの時間配分は訪問面会件数が7で、段取りや営業技術が3となります。経営者であれば顧客の要望やその変化、競合社の取り組みといった営業の管理に7の力、会社内の仕組みなどの社内管理に3の力を注ぎます。

織田信長がわずかな兵を率いて、2万5千人の今川軍を破ったのは有名な話です。まともに戦えば、象が蟻を踏みつぶす程の戦力しかなかったのにです。ランチェスターの法則を使って説明すれば、軽装備、隠密行動を取り、京都へ移動中の今川軍の伸びきった兵力に対して、重点攻撃で今川義元だけをターゲットとした一点突破の局地戦で勝利を収めたのです。織田信長にすれば苦肉の策以外のなにものでもありません。正々堂々正面から戦えるのは、本当に力のある者だけです。我々中小企業に誇れる力などありません。ズルイといわれるような戦いをする力しか持ち合わせていないことを理解しましょう。中小企業にとってはズルイといわれる頭を使った戦いこそが格好良い戦いなのです。力もないのに強者の戦略をとっていませんか?

参考文献 『ランチェスター弱者必勝の戦略 強者に勝つ15の原則』竹田陽一著
 

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