民泊(民泊による所得の課税関係について確認しよう)
■はじめに
ここ数年、空き部屋や駐車スペースのシェア、家事や育児代行等をはじめ、多様な分野で新たなシェアリングエコノミーサービスが登場しています。そのうちの一つとして、「民泊」があります。「民泊」とは、住宅の全部又は一部を活用して、旅行者等に宿泊サービスを提供することを指して、「民泊」ということが一般的です。インターネットを通じて空き室を短期で貸したい人と宿泊を希望する旅行者とをマッチングするビジネスが世界各国で展開されており、急速に増加しています。この民泊については、感染症まん延防止等の公衆衛生の確保や、地域住民等とのトラブル防止に留意したルールづくりはもとより、旅館業法の許可が必要な旅館業に該当するため、一定のルールの下、健全な民泊サービスの普及を図るため、制度も整備されてきました。そして、民泊を営むことで生じる所得は、所得税の課税対象となります。そこで、今回は、この民泊による所得の課税関係について確認してみたいと思います。
■所得区分
「民泊」をしたことで得た所得は、原則として雑所得に区分されます。所得税は、所得区分によって、税金の計算方法が異なるため、どの所得区分になるのかは重要なのです。雑所得になる場合は、収入から必要経費を差し引くことが出来ます。
■必要経費の具体例
では、どのようなものが必要経費にできるのでしょうか。必要経費に出来る費用は、①その収入金額を得るため直接に要した費用②その年の販売費、一般管理費その他民泊で収入を得るために生じた費用です。具体的には、民泊仲介業者に支払う仲介手数料、民泊管理業者等に支払う管理費用や広告宣伝費、水道光熱費、通信費、非常用照明器具の購入費、民泊に利用している家屋の減価償却費、固定資産税などです。これらの費用のうち、民泊仲介業者に支払う仲介手数料や民泊管理業者に支払う管理費用など、民泊を行うためにのみ支払うものについては、それぞれその金額を必要経費にできます。他方、水道光熱費や固定資産税など、業務用部分と生活用部分の費用の両方が含まれているものについては、民泊用の金額のみ必要経費にすることができます。民泊用の金額は、合理的な方法により区分して計算することになります。例えば、民泊に利用している部分の床面積の総床面積に占める割合を基にするなどして計算します。
■その他のシェアリングエコノミー
その他シェアリングエコノミーにはどのようなモノがあるでしょうか。一般社団法人シェアリングエコノミー協会によると、シェアリングエコノミーは取り扱う資産によりスキル・空間・モノ・移動・お金の五つのタイプがあります。それぞれのタイプでは、次のような資産をシェアしています。
①スキルのシェア:介護や育児、知識や技術など
②空間のシェア:駐車場や民泊、スペースや会議室など
③モノのシェア:フリマやオークションでの物品の販売など
④移動のシェア:車やバイク、サイクルなど
⑤お金のシェア:クラウドファンディングや仮想通貨など
原則シェアリングエコノミーで得た収入は所得税の対象となり、原則確定申告が必要です。ただし、会社員で給与所得、退職所得を除いた所得が20万円以下の場合、納める所得税の金額がない場合は確定申告は不要です。また、「③モノのシェア:フリマやオークションでの物品の販売など」は所得税は非課税になることが多いと考えられます。個人が生活で使用していた家具や衣服の売却については、所得税は非課税と規定されているからです。もちろん、販売目的で仕入れて、販売した場合は所得税が課税されます。